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民泊は今いくつある|届出と廃止を引き算する

「民泊◯万件」の多くは廃止済みを含んだ累計です。観光庁の施行状況から届出件数・事業廃止件数・届出住宅数を分けて読み、自分の地域の母数と1住宅あたりの宿泊日数を公表資料から出す手順をまとめます。

この記事でわかること

  • 「民泊の届出◯万件」は法施行以来の累計で、そこから事業廃止件数を引いた「届出住宅数」が、廃止されていない届出の数だということ
  • 観光庁の「届出住宅あたり15.4日」が、届出住宅数ではなく報告件数で割った値だと、資料の注記に書かれていること
  • 自分の施設を比べる母数を、隔月更新の公表資料から自分で出す手順

累計と現存は別の数字

観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行状況を隔月で公表している。令和8年9月15日時点の数字はこうだ(観光庁 民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法の施行状況」)。

項目件数
住宅宿泊事業の届出件数67,932件
うち事業廃止件数24,895件
届出住宅数(届出件数 − 事業廃止件数)43,037件

同サイトは「届出件数のうち、事業廃止件数は24,895件で、9月15日時点における届出住宅数は令和8年7月よりも967件増加し、43,037件となっている」と書いている。つまり 届出件数は法施行以来の累計 であって、営業できる状態にある数ではない。引き算の結果は届出件数の約63.4%にあたる(元の件数は観光庁「届出住宅数等の推移」、百分率は筆者の計算。資料に比率の記載はない)。

参考として、同じページは「※ 平成30年6月15日時点における住宅宿泊事業の届出件数は2,210件」と注記している(観光庁 民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法の施行状況」)。累計が増え続ける一方で、その3分の1超はすでに事業をやめている、という形で積み上がっている。

直近1年を並べる

同じサイトには過去時点の公表資料(PDF)が残っているので、隔月の数字を並べられる。

時点届出件数うち事業廃止届出住宅数
令和7年9月16日55,37720,13135,246
令和7年11月14日57,51220,66136,851
令和8年1月15日59,42721,31538,112
令和8年3月13日61,60522,03039,575
令和8年5月15日63,65822,91340,745
令和8年7月15日65,83723,76742,070
令和8年9月15日67,93224,89543,037

出典はいずれも観光庁「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧」の各時点版(令和7年9月16日時点・令和8年9月15日時点ほか)。

この12か月で届出件数は12,555件増えたが、同じ期間に事業廃止件数が4,764件増えているので、届出住宅数の純増は7,791件にとどまる(各時点の件数は上記の公表資料、差分は筆者の計算)。「届出が1万件以上増えた」と「廃止を引いた届出住宅数が7,791件増えた」はどちらも同じ資料から出てくる言い方で、後者のほうが母数としては使える。

廃止の比率は地域で大きく違う

同じ一覧PDFは、都道府県・保健所設置市・特別区の3つに分けて集計している(令和8年9月15日時点)。

区分届出件数うち事業廃止届出住宅数
都道府県21,7135,59416,119
保健所設置市19,1199,4149,705
特別区(東京23区)27,1009,88717,213
合計67,93224,89543,037

事業廃止が届出件数に占める比率は、全国では約36.6%だが、区分ごとに見ると都道府県が約25.8%、保健所設置市が約49.2%と差がある(件数は観光庁「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧」令和8年9月15日時点、百分率は筆者の計算。資料に比率の記載はない)。同じPDFには自治体別の内訳もあり、大阪市は届出6,267件・事業廃止4,224件・届出住宅2,043件、札幌市は6,227件・3,124件・3,103件、新宿区は5,767件・1,787件・3,980件となっている。累計の大きさが現存数の大きさを意味しないことが、自治体単位ではもっとはっきり出る。

自分の地域を見るときは、この一覧で該当する行を引く。届出の受理先は原則として都道府県知事だが、「都道府県知事に代わり、保健所設置市の長(政令市、中核市等)、特別区の長(東京23区)が届出の受理・監督・条例制定事務を処理できる」仕組みがある(観光庁 民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」)。令和8年9月15日時点の一覧で別表になっているのは、この事務を処理している36市と23区で、さいたま市・千葉市・福岡市・熊本市などは表に名前がない(同一覧)。3区分の合計が全国計と一致することから、表に無い市町村の件数は都道府県の行に合算されていると読める。市の行が見つからなければ都道府県の行を見る。

「届出住宅あたり15.4日」の中身

届出件数とは別に、観光庁は宿泊実績を隔月で集計している。令和8年6月1日〜7月31日を対象にした公表資料の数字はこうだ(観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績について(令和8年6月-令和8年7月)」)。

  • 届出住宅数 42,587(7月31日時点)
  • 報告件数 36,197(報告率85.0%。同資料)
  • 宿泊日数の合計 557,439日(前年同期比129.3%)、届出住宅あたり15.4日(同資料)
  • 延べ宿泊者数の合計 1,627,034人泊、届出住宅あたり45.0人泊(同資料)
  • 宿泊者の国籍は外国人334,689人(57.5%)、日本国籍を有する者247,473人(42.5%)(同資料)

この「届出住宅あたり」が何で割った値かは、同じ資料の別表に注記がある。「※「/届出住宅」は、自治体ごとの各実績を報告件数で割って算出した実績」とあり、分母は届出住宅数ではなく報告件数 だと書かれている(同資料の【別表】)。実際に割ってみると、557,439日÷36,197件=15.4日、582,162人÷36,197件=16.1人で公表値と合う。届出住宅数42,587件で割ると13.1日になり、公表値にはならない(元の数値は同資料、割り算は筆者)。

つまり「全国平均15.4日」の相手は、全届出住宅の平均ではなく、報告を出した住宅の平均 である。報告率は85.0%で(同資料)、残りの約15%は実績も分母も空欄のまま外れている。同じ総日数を届出住宅数で割れば約13.1日になる。どちらが正しいというより、比べる相手の分母を揃えないと自分の施設の位置がずれる、という話だ。

なお、この6-7月分については、公表資料PDFの報告件数36,197件・日本国籍を有する者247,473人に対し、施行状況ページ本文は36,198件・247,437人と書いており、わずかに食い違っている。本記事はPDF側の値を採った(PDFの247,473人+334,689人=582,162人が、同資料の宿泊者数の合計と一致するため)。

1年ぶんに直す

宿泊実績は2か月ごとの公表なので、年間で見たいときは6期ぶんを足す。令和7年8月〜令和8年7月の宿泊日数を足すと3,460,255日で、同じ6期の報告件数の平均は32,946.5件だった。割ると1件あたり約105日になる(各期の値は観光庁の公表資料令和7年8月-9月・令和7年10月-11月・令和7年12月-令和8年1月・令和8年2月-3月・令和8年4月-5月・令和8年6月-7月、合計と平均は筆者)。同じ総日数を届出住宅数の平均39,457件で割ると約88日になる。

住宅宿泊事業は「人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないもの」と定義されている(観光庁 民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業者編」)。平均で見るかぎり、上限の180日はまだ遠い位置にある。ただしこれは全国の平均を1件あたりに割り戻した概算で、期中に届け出た住宅も分母に入るため下に引っ張られる。個々の施設の上限到達の有無を示す数字ではない。

この数字で何を判断しないか

  • 届出住宅数は「民泊の総数」ではない。 民泊には旅館業法(簡易宿所)の許可、国家戦略特区法の認定(特区民泊)という別の制度があり、この集計には入らない。制度の違いは同サイトの比較表にある(観光庁 民泊制度ポータルサイト「はじめに「民泊」とは」)
  • 特区民泊は単位が違う。 一覧PDFには特区民泊の認定居室数が30,921居室(令和8年6月末時点)と併記されているが、こちらは居室の数で、届出住宅数と足し合わせられる単位ではない(同PDF)
  • 日数は季節で動く。 上の6期を見ても、令和7年10月-11月は632,470日、令和8年6月-7月は557,439日と差がある。1期だけを年換算しない

まとめ

明日からできることは3つ。

  1. 「民泊◯万件」という数字を見たら、累計の届出件数か、事業廃止を引いた届出住宅数かを確かめる。公表資料には3つとも並んで載っている
  2. 一覧PDFで自分の地域の行を引き、廃止を引いた届出住宅数を母数として書き留める。市の行が無ければ、その市の件数は都道府県の行に入っている
  3. 1住宅あたりの日数と比べるときは、分母が報告件数か届出住宅数かを揃える。隔月更新なので、2か月に一度開き直せば鮮度は保てる

ぐるり360では撮影を提携カメラマンが担当し、ビューワー側の制作を請け負っている(見え方は匿名デモで開ける)。

出典

民泊統計観光庁

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