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360度ツアー導入事例 数字に付いている条件

360度ツアーの導入事例を掲載元のページまで遡って確認しました。数字はいずれもリコーとMatterportが自社サービスの導入事例として公開している自己申告値です。それぞれに付いている条件と、数字を出していない事例の中身をまとめています。

この記事でわかること

  • 効果の数字が載っている事例は、国内は不動産・自治体、海外は宿泊とツアー提供ベンダーに偏っていて、日本の民泊で数字を出した事例は見つからなかった
  • 掲載元まで確認できた国内4件・海外4件の数字と、それぞれに付いている条件
  • 数字を公表していない事例のほうが、民泊・レンタルスペースの運営には参考になる理由

数字が出ている事例は不動産と海外に偏っている

「360度ツアー 導入事例」で検索すると効果の数字が並びますが、掲載元のページまで遡れるものは多くありません。今回確認できたのは、リコーのTHETA 360.bizが公開している国内の不動産会社・自治体の事例と、Matterportが公開している海外の事例(宿泊・ホテルの導入者と、ツアー提供ベンダーが自社顧客について語ったもの)です。導入自体は珍しくなく、リコーは2020年12月10日に契約数8,000社を突破したと発表しています。それでも、日本の宿泊施設で導入前後の予約数や問い合わせ数を数字で公表している事例は見つけられませんでした。

以下の数字はすべて、リコーまたはMatterportが自社サービスの導入事例として公開しているページのもので、導入者の自己申告です。第三者の検証も、算出根拠の開示もありません。業種も国も自分の宿とは違う事例なので、そのまま自分の予約数に当てはめず、「どういう変化が起きたと語られているか」を読む材料として扱ってください。

国内:リコーの事例ページに数字が載っている4件

導入者公表されている数字付いている条件
リビングギャラリー(賃貸仲介・新潟)成約率が20%改善数字はリコー側が付けた記事内の小見出しにあるだけ。インタビュー本文に対応する記述はなく(本文は「現場を内覧しないでの成約に繋がっている」という感想のみ)、期間・母数・算出根拠がページ内のどこにも示されていない
きらきら不動産(賃貸仲介・東京)成約率が約1割から3〜5割に上昇本文の根拠は「問合せ10件で成約1件=約1割が普通のところ、自社は3割〜5割」という記述。比較対象は自社の導入前ではなく業界一般の水準で、分母は問い合わせ件数。公開ツアー3,000件超・パノラマ画像40万枚超という運用規模での話
藤和ハウス(総合不動産業・東京/発言は仲介事業部の担当者)サイト滞在時間が当初120%程度、長いもので150%まで増加本人の発言。予約や成約ではなく、ホームページ閲覧者の滞在時間
伊賀市(自治体・空き家バンク)以前のサイトと比べてページビューが倍近く比較期間・実数は非公表

この4件のうち、リビングギャラリーの20%だけはページ本文に根拠が見当たりません。他の3件と同じ重みでは扱わないでください。

数字より、何が「減った」かを語っている事例

効果を数値で公表していない導入者も多く、そちらのほうが民泊・レンタルスペースに近い話をしています。

  • 同じリビングギャラリーでも、本文で効果として語られているのは内覧希望件数が減ったことです。減ったぶんを新規のお客さま対応に回せる、という生産性の話です。なお同じページには緊急事態宣言の発令後に約200件を超える来店なしの申し込みがあったという記述もありますが、これが導入の成果なのか当時の状況の説明なのかはページ内で切り分けられていないので、リンク先の本文で確かめてください。
  • 上原不動産は、具体的な数値では答えられないと明言したうえで、内見数が減った割に成約率は維持・向上していると述べています。
  • 伊賀市は、以前は内覧に来た人から「イメージと違う」と言われるケースが度々あったが、360度画像の公開後はそれが無くなったとしています。現地確認の中身も、部屋の中から周辺の道筋やリフォーム費用の見立てへ移ったとのことです。
  • 住友不動産は数字を出さず、入居前に現地を内覧できない海外顧客(サービスアパートメント事業では契約者の約7割)の事前確認、入居後のイメージギャップの解消、営業担当が2度3度と撮り直して送る負荷の軽減を挙げています。
  • 新里メディケアグループ(有料老人ホーム)は、サイトのアクセス数について以前との比較はしていないと述べています。効果測定をしていない導入例です。

共通しているのは「増やした」話より「減らした」話だという点です。民泊やレンタルスペースに置き換えるなら、到着後の「写真と違う」や問い合わせの往復にあたる部分でしょう。ただし業種も来店・内見の位置づけも違うので、同じ形で効くとは限りません。いずれも語られた実感であって、測定された効果ではありません。

海外:宿泊・ホテルの導入者2件と、ツアー提供側が語る顧客の数字2件

公表元立場公表されている数字付いている条件
Vacasa(北米の民泊管理大手)導入者予約転換率が約12%改善、ツアーのある物件は閲覧時間が3倍12%は予約数ではなく予約転換率(booking conversion rate)。原文に2019年9月〜2021年9月のデータという注記あり。掲載物件の約90%にツアーが付く規模での話で、閲覧時間の比較対象はツアーのない物件
Lindner Hotels & Resorts(ドイツのホテルグループ)導入者クリックが25%増Googleマイビジネスの登録情報に各ツアーをリンクした結果のクリック数。クリック率ではなく、自社サイトの予約ボタンの話でもない
MPskin(イタリア・ツアー用CMS)ツアー提供ベンダーホテル顧客の直販予約が20%増MPskin自身ではなく同社の顧客であるホテル群についての数字。特定の1社の公表値ではない
Allseated(イベントプランニングのデジタルサービス)ツアー提供ベンダー導入した会場側の売上が30%増、イベントプランナーの作業効率が60%向上効果の主語はAllseated自身ではなくその顧客。売上はデジタルツインのツアーと空間プランニングツールに投資したホスピタリティ事業者の数字で、効率はイベントを企画するプランナー側の数字。ツアー単体ではなくプラットフォーム全体への投資の効果

まとめ記事では「バーチャルツアーでホテルサイトのクリック率が上がる」といった、具体的な数字を添えた断定的な書き方を見かけます。ただ、その書き方の出所をたどれたものはありませんでした。一次資料として確認できたのは上のLindner1社で、Matterportの事例ページの原文は「すべてのMatterport 3DツアーをGoogleマイビジネスの登録情報にリンクした結果、クリックが25パーセント増えた」です。増えたのはGoogle上のクリック数であり、クリック率でも、自社サイトの予約ボタンでも、業界一般の数字でもありません。主語と対象がすり替わっていないか、リンク先の本文で確かめたほうが安全です。

公開されているツアーを実際に触ってみる

数字より、動いているツアーを触るほうが判断材料になります。2026年9月時点で表示を確認できたものです。

公開者内容
伊賀流空き家バンク(伊賀市)物件の詳細ページにツアーを埋め込み
東京都河川施設360°バーチャルツアー(東京都建設局)普段入れない施設内部の360度画像とドローンの360度動画
郡上八幡観光協会町並み・城・鍾乳洞などをパノラマごとに個別ページで公開
かつらぎ温泉 八風の湯専用サービスを使わず、Googleマップ(ストリートビュー表示)のiframeを1つ貼り、「かつらぎ温泉360°パノラマ写真」として見せている
TOGITOGI(岡山・コワーキング/会議室)トップページにSpacelyのツアーをiframeで直接埋め込み(見出しは「TOGITOGI施設内360度ビュー」)

八風の湯とTOGITOGIのやり方は、宿やスペースの運営者がすぐ真似できる形です。どちらも自社サイトの1ページにiframeを1つ貼っているだけで、違いは中身がGoogleマップ(ストリートビュー表示)か、専用のツアーサービス(Spacely)かという点だけです。

なお一休コンシェルジュについては、2019年4月23日付でリコーとのコンテンツ共同制作が発表されていますが、これは当時のニュースリリースで、いま触れるツアーのページではありません。現在も継続しているかは確認していません。

レンタルスペースは掲載面に直接載せられる

レンタルスペースは、作ったツアーを予約プラットフォームにそのまま載せられるのが民泊との違いです。リコーは2022年12月7日に、レンタルスペース予約のインスタベース(Rebase)とRICOH360 Toursの連携を発表しています。手順はインスタベースのヘルプにあります。

  1. 管理画面にログインし、左メニュー「施設・スペース」の中の「スペース一覧」をクリックする
  2. 該当スペースの「編集」をクリックし、「その他」の「編集する」をクリックする
  3. 紹介動画・3Dビュー欄の「追加」からツアーのURLを登録する(最大2つ)
  4. 画面内下部の「この設定で申請を送る」をクリックする。スペースページへの反映にタイムラグが生じる場合がある

対応サービスはYouTube/Googleインドアビュー/Matterport インドアビュー/Spacely インドアビュー/RICOH360 Tours/THETA 360.biz/RICOH THETA/Insta360の8つ。紹介動画と3Dビューは同じ枠(最大2つ)を分け合うので、YouTube動画も載せるなら1枠を使うことになります。RICOH360 ToursのURLは embed.ricoh360.com か view.ricoh360.com で始まる必要があり、GoogleインドアビューはGoogleマップの「画像を共有または埋め込む」から得たiframeのsrcを使います。

月額型のサービスは公開できるツアー数に上限があります。THETA 360.bizの料金は税別月額で、フリープラン0円(公開1つ)、パーソナル5,000円(20)、スタート10,000円(200)、ビジネス30,000円(300)、エンタープライズ50,000円(500)。ただしフリープランは料金表に「フリープラン(30日間)」「無料でお試し!」とあるとおり試用期間つきなので、継続して公開するなら有料プランになります。1拠点でも、部屋ごとに分ける・拠点を増やすと公開上限にすぐ当たります。物件が増える見込みなら、上限と月額が何年続くかを先に見ておくほうが安全です。

撮るときに事例から拾えること

  • 全天球カメラは撮影者も写り込みます。伊賀市の事例では、三脚に付けたカメラを部屋の真ん中に立て、撮影者は物陰に隠れてタブレットから遠隔で撮影していると説明されています(スマホのアプリでも同じことができます)
  • 三脚は小さいものを選ぶと写り込みが目立ちにくい。同じ新里メディケアグループの事例では、ツアー作成サービス側のぼかし機能ではムラができるため、別途編集ソフトで加工していると述べられています
  • ゲストや利用者がいない時間帯に撮る。一度に撮り切れなければ日を分ける
  • 居室だけでなく浴室・トイレ・玄関・共用部まで。民泊・レンタルスペースなら水回り、ゴミ置き場、電源とWi-Fiまわりが効く
  • 各パノラマに部屋の種類と広さのキャプションを入れ、撮影ポイントは実際の内見動線(玄関→リビング→水回り→寝室)の順に置く

まとめ

  1. 上に挙げた公開中のツアーを2〜3件、スマホで実際に触ってみる。自分の物件のどこを撮るべきかが具体的に見えてきます。
  2. 数字を探すより、自分の宿で「減らしたいやり取り」を書き出す。事例で語られている効果は、ほぼこの領域に集まっています。
  3. レンタルスペースを運営しているなら、インスタベースの登録欄(施設・スペース→スペース一覧→編集→その他)を先に見ておく。載せ先の仕様を知ってから作るほうが、手戻りが少なくて済みます。

撮影は各エリアの提携カメラマンが担当し、ビューワーとページの制作までをぐるり360で請け負っています。見え方はデモで確認できます。

出典

導入事例バーチャルツアー民泊運営レンタルスペース出典検証

360度内見ツアーを試してみる

説明より、触ってみるのが早いサービスです。実際の360度ツアーのデモを30秒ほどで確認できます。

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